未来を創造する、福工大の挑戦

資源の流れを変える「上流」工程のリサイクルに取り組む

工学部 生命環境化学科

久保 裕也 准教授

動画のサムネイル

金属を作る「上流」工程で発生する廃棄物から資源を取り出す

リサイクルは、役目を終えた製品や素材の再利用だけを指す言葉ではありません。私たちが手に取る製品や素材を作る際に生まれる様々な廃棄物から、資源を取り出すこともリサイクルに該当します。久保研究室は、鉄製品の原料を作る「上流」工程で生まれる廃棄物に着目。廃棄物から重要物質やレアメタルを取り出す技術を研究し、「上流」工程における新たなリサイクルの仕組みづくりに取り組んでいます。このリサイクルは資源の多くを輸入に頼る日本にとって、国際的な資源不足や資源高に対処するための有効な手段。資源の流れを、根本から変えることができます。

不純物の鉄鋼スラグから重要物質「リン」の選択抽出に成功

久保研究室は、鉄を作る過程で生じる不純物「鉄鋼スラグ」から重要物質の「リン(P)」を選択抽出する方法を開発しました。リンは、生物にとって不可欠なミネラル分。また農業肥料、食品の保存料、バッテリーや半導体の製造など様々な産業に必要な物質です。しかし、世界的な需要の高まりで原料価格が急騰しています。近年では、資源枯渇の可能性も指摘されていますが、日本では全量を限られた国からの輸入に頼っているのが現状です。久保研究室が開発した技術は、鉄鋼スラグに一時的に大電流を流し、物質同士を分離させるもので、分離させた後にリンを抽出。その後、さらに特殊な加熱方法でリンを精製する方法です(※特許6962536)。

「ニオブ」や「タンタル」など希少金属の製造方法も開発

レアメタルの一種、「ニオブ」や「タンタル」は、電子材料など様々な用途に利用されています。鉱石中に共存するこの2金属は分離方法が難しく、また製造過程で用いるフッ化水素酸は危険性の高い毒物として指定されています。しかもフッ化水素の原材料は近年、安定的な確保が困難な状況です。久保研究室では、このフッ化水素酸を用いずにニオブ?タンタルを安全に取り出す方法を開発しました。具板的には、「①ニオブ?タンタルを含む粉末状物質にアンモニウム塩を混合」「②加熱、③溶融体を生成」「④固化した溶融体を所定量の溶媒で溶解して懸濁液を生成」「⑤前記懸濁液を沈殿物と液体物に固液分離」「⑥前記沈殿物を酸溶液との反応により溶解する」という方法で、「ニオブ、及びタンタルの液化処理方法」という技術発明の特許を取得しています。

工学部 生命環境化学科

久保 裕也准教授

  • 研究分野:環境工学、リサイクル工学、金属製錬工学

関連する学部?学科

この記事をシェアする

  • alt
  • alt
  • alt
  1. 研究トップ
  2. 研究レポート
  3. 資源の流れを変える「上流」工程のリサイクルに取り組む