未来を創造する、福工大の挑戦

国際宇宙ステーションでの実験「たんぽぽ」で生命の起源を探る

工学部 生命環境化学科

三田 肇 教授

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日本実験棟「きぼう」の曝露部を利用した多様な実験を実施

アストロバイオロジー実験「たんぽぽ」は、我が国のアストロバイオロジー研究者が集まり実施している宇宙実験です。「地球の生物はどうやって生まれたのか?」「その起源は他の星からやってきたものなのか?」「そもそも地球以外の宇宙に生命体がいる可能性はあるのか?」といった謎の解明に挑むため、生物の宇宙空間で移動する可能性や、最初の生命が生まれるために必要な有機物の宇宙における安定性や変化を探る多様な実験が、国際宇宙ステーション?日本実験棟「きぼう」の曝露部を利用して行われています。2015年より国内外の多数の研究者が参加しているこの実験に、三田肇教授は「たんぽぽ」から参加し、「たんぽぽ3」「たんぽぽ4」「たんぽぽ5」では研究代表者を務めています

宇宙空間でアミノ酸が結合したペプチドが生成できるのか?

生物(例:人間)の体は約60%が水分、20%がタンパク質でできています。「タンパク質」はアミノ酸が結合して構成されており、生物の源になる物質はアミノ酸と言うことができます。これまでに隕石などの中から「約100種のアミノ酸」の検出が報告されていますが、「たんぽぽ4」プロジェクトでは、アミノ酸の薄膜を宇宙空間にさらして持ち帰った試料を「たんぽぽ2?3」などの資料とともに分析し、宇宙で紫外線などによりアミノ酸が結合したペプチドが生成できるかどうかを調べています。もし宇宙でペプチドが生成できれば、さらに宇宙でタンパク質まで進化できる可能性が広がります。

「たんぽぽ5」の実験では福工大の大学院生が資料準備に貢献

「たんぽぽ3」は2021年10月より2022年1月までの440日間、コケの胞子やシアノバクテリアなど様々な試料を宇宙で曝露し、SpaceX CRS-24号機で地球に帰還してJAXAより試料の返還を受けました。ここでは、人類が火星などの地球外に進出した時のための基礎データの採取を主目的としていますが、現在、いくつかの研究機関で帰還試料の解析が進められています。また、「たんぽぽ4」は2022年2月にCygnus NG-17号機で打ち上げられ、アミノ酸やペプチドなどが宇宙空間で曝露されました。ここでは、宇宙環境でのペプチド合成反応などを調べることにしており、2023年1月に宇宙ステーションから帰還しました。なお、2023年1月にSpaceX CRS-27号機で打ち上げられた「たんぽぽ5」には、福工大の大学院生が準備に大きな貢献をした試料も含まれており、同年春から宇宙曝露が行われました。

工学部 生命環境化学科

三田 肇教授

  • 研究分野:有機地球科学、アストロバイオロジー

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