「環境DNA」を用いた生物の生息実態調査による新たな環境保全づくり
社会環境学部 社会環境学科
乾 隆帝 教授

海や川の水に含まれる生物片からDNAを解読する
「環境 DNA」とは、ここ10年ほどで研究が進展している新技術。海や川の水に含まれる魚などの生物のフンや、皮膚、分泌物の微細な破片に注目し、そのDNAを読みときます。生物は種ごとにDNAの配列が少しずつ違うため、水に含まれる破片からその場所にどんな種の魚がいるのか特定することが可能です。また、含まれるDNAの量からどれくらいの生息密度で生物がいるのかも分析できます。調査現地の水を汲むだけでサンプル採取が可能なので、生物を実際に採集する従来の方法よりも少ない時間や労力で生息状況を把握できます。さらに、網などで生物を採集する方法では困難だった、警戒心が強く観察しにくい生物についても生息の有無が分かり、絶滅危惧生物の発見などにつながっています。
約1リットルの水を採取するだけで正確な生物の分析が可能
地球温暖化に伴う魚類の生息分布の研究にも着手
乾教授は、新しい技術である「環境 DNA」を実際のフィールドに適用する専門家です。この新技術を用いたフィールドワークによって、様々な種類の魚類の行動や生態を追跡しています。調査する川には、水温計測器「水温ロガー」も網羅的に設置。これまで推測しかできなかった、「地球温暖化によって、実際に魚の分布や資源量はどう変わるのか?」というテーマに対して、明確なデータを提出することを目指しています。また、研究を応用することで、「今後の気温変動によって実際にどういう生物が絶滅危惧種に陥る可能性があるのか」なども予測できるようになり、将来的に生態系保全の枠組みを変えることも考えられます。
科研費(科学研究助成事業)
研究課題名:気候変動に伴う河川魚類の分布?生物量変動予測
補助事業期間 :2019年度~2021年度
掲載物
『日経バイオテク』2019年5/13号 特集「発展する環境DNA(eDNA)領域」に 乾教授らの研究活動等が紹介されました。前任の山口大に環境 DNAセンターが設置されています。