未来を創造する、福工大の挑戦

液体と気体の性質を併せ持つ超臨界流体を用いた新ナノ素材開発

工学部 生命環境化学科

松山 清 教授

動画のサムネイル

ナノテクノロジーで社会のイノベーションを支える

「水」を0度まで冷やすと氷になり、100度まで加熱すると沸騰して蒸気になるというように、物質には、固体、液体、気体という3つの状態があります。しかしこの3つ以外に、物質には別の状態があることが明らかになっています。それは気体と液体の中間の状態、「超臨界流体」です。水の場合は、温度=374℃、圧力=218気圧という条件によって超臨界流体の状態が出現。それは液体のようにものを溶かすことができ、なおかつ気体のように拡散します。松山研究室では、この液体と気体の両方の性質を併せ持つ超臨界流体を応用して、様々な新しいナノテクノロジーの開発に取り組んでいます。現在、私たちの身の回りの化粧品や食品、農業、電気自動車の電池開発などについて企業と共同で研究が進んでおり、超臨界流体の特徴を生かしたナノテクノロジーは、社会のイノベーションを支えています。

溶媒としての活用が可能で拡散しやすいことが特徴

超臨界流体の特徴をさらに説明すると、密度は液体に近く、様々な物質を細かく溶かす溶媒として用いることができます。その一方で粘性は気体に近く、分子が活発に運動していることから拡散しやすい性質も持っています。このため、超臨界流体を用いることで液体の状態では溶けない物質を溶かして、さらに、浸透しない場所にいきわたらせることができるようになります。また、有機溶媒の代わりになるため環境にも優しく、また人体に対しても無害なので身に着けるものや食品などにも応用が可能です。

状態 気体 超臨界流体 液体
密度[kg/m3] 1 100~1000 1000
粘度[mPa?s] 0.01 0.1 1
拡散係数[m2/s] 10?5 10?7~10?8 10?10

ムラなく輝くファンデーションも産学連携によって開発

大手化粧品会社が販売する「ファンデーション」にも、松山研究室の超臨界流体の技術が生かされています。ファンデーションの粉は、電子顕微鏡で拡大すると板のような形をしています。また、その粒子の表面は、さらに小さな(約10万分の6ミリ)金属の微粒子によってコーティングされています。このコーティングには、超臨界流体が欠かせません。微粒子を拡散性の高い超臨界流体に溶かし、粉の表面にコーティングすることで、偏りなく分散することができます。これによってどの角度からの光も均一に反射させる、ムラのないファンデーションができあがります。

作物に100%吸収される肥料で農業分野に生産性革命を

超臨界流体はまた、農業分野においても新たな生産性革命を起こそうとしています。通常、肥料は植物の根から、一部分しか吸収されません。しかし、超臨界流体技術により肥料をナノ粒子化することで、肥料の吸収率を劇的に向上させることが期待できます。吸収率を上げることができれば、農薬の「与えすぎ」による土壌汚染も防ぐことが可能で、環境に優しく効率的な「新たな農業」を実現することができます。

科研費(科学研究助成事業)

研究課題名:「超臨界活性化による多孔性金属錯体のナノ界面歪みを利用した合金ナノ粒子触媒の創成」 
補助事業期間 : 2024~2026

工学部 生命環境化学科

松山 清教授

  • 研究分野:化学工学、高圧化学、材料工学

関連する学部?学科?研究所

この記事をシェアする

  • alt
  • alt
  • alt
  1. 研究トップ
  2. 研究レポート
  3. 液体と気体の性質を併せ持つ超臨界流体を用いた新ナノ素材開発